盆栽鉢は何を選ぶ? 盆栽の魅力を最大限に引き立てる鉢選び

小林 盆栽の知識

盆栽鉢は何を選ぶ? 盆栽の魅力を最大限に引き立てる鉢選び

盆栽の良し悪しを決めるのも鉢次第。盆栽鉢の種類、特質を知って、盆栽作りをより楽しいものに。

樹を選ぶのももちろん大事ですが、盆栽において鉢選びは鑑賞する上で最重要と言っても過言ではありません。樹にとって、生育上の大地の役割もありますが、樹を引き立て、一体化し、縮景を作り出す大切な2つの役割があります。

樹木を剪定したり、樹形を作ったりといった楽しさの上に、調和の取れた盆栽鉢を選ぶというのも、盆栽の醍醐味の1つです。

盆栽を元気に育てるためにも、盆栽の世界観を保ち、体現するためにも、盆栽鉢の種類、特質などを知っておきましょう。

盆栽鉢のルーツも紹介していますので、歴史・背景に思いを馳せながら、鉢を選ぶのも、一歩進んだ盆栽の楽しみ方ではないでしょうか。

盆栽鉢とは

樹と一体になり、盆栽のよさを引き立てるのが盆栽鉢=盆器です。形状、色、焼き方、大きさなど、さまざまな鉢がありますが、樹とのバランスを見て、思い描く盆栽の形を想像しながら鉢を選ぶのも、盆栽の楽しみの1つです。

盆栽鉢の選び方により、盆栽全体の印象も大きく違ってきます。盆栽愛好家の間では「樹が先か鉢が先か」と言われる程、盆栽鉢選びは重要なテーマです。

樹を立派に育てても、鉢との調和が取れていなければ、盆栽として成立しているとは言い難いです。「盆」は『器』、入れ物であり、「裁」は『植物』のことです。

樹だけを見るのではなく、鉢との相性が重視されます。盆栽と鉢植えの違いでも述べましたが、鉢植えがどちらかと言えば植物自体を鑑賞するものであるのに対し、盆栽は植物の姿と共に、背景をも取り込み、自然の縮景を盆上に表すことです。

自然美と人工美の調和が見どころである盆栽において、鉢と一体化している点も見どころです。樹と鉢の調和を主としますが、床の間に飾る場合は、掛け軸や添え物と鉢の調和も求められます。

また、機能面では、成長中の樹は1~2年毎、成熟してくると3~5年ごとに植え替えを必要とします。樹の大きさ、成長具合に合わせて鉢を選ぶようにして下さい。

鉢合わせについて

鉢合わせ

樹と鉢が上手に組み合わせることを「鉢合わせ」と言います。樹と鉢の組み合わせ=「鉢合わせ」の相性を「鉢映り」と言います。「鉢合わせ」の結果としての盆栽の全体の見栄えが「鉢映り」となります。

見栄え、相性がいいものを「鉢映りがよい」、悪いものを「鉢映りが悪い」というように使います。

盆栽作りをはじめると、鉢ごと盆栽を購入するのでなく、自分で樹に合う鉢を選んでみたくなりますが、いざ選んでみると、迷ってしまう、ということもあります。

盆栽の樹も、松柏類、雑木類、花物類、実物類など様々な種類、直幹、斜幹、懸崖、文人木など様々な樹形があり、鉢も様々な種類、色、形があります。

組み合わせるのが難しいと思われるかもしれませんが、鉢合わせのコツを覚えれば、盆栽の魅力もより引き立ち、盆栽の奥深さに触れ、楽しさも増すに違いありません。

試行錯誤を繰り返しつつ、鉢合わせをしていくことで、盆栽への愛情を一層感じられることでしょう。

鉢合わせはなぜ必要か

1.盆栽は、山野、海、川沿いなど自然界に生育している樹を、その風景や背景まで纏って、盆上に表現しています。自然の縮景を再現するのに、樹と調和の取れた鉢を合わせましょう。

2.樹と鉢が調和して、ぴったりだと思っても、樹の生長や変化に合わせて、鉢を変えるようにします。

3.樹形が完成した後に、樹形を引き立たせるために鉢との組み合わせや植え方を考えて下さい。

4.鉢植えと違って、樹と鉢が一体化したものが盆栽ですので、樹形づくりをしている過程に合ったものが必要です。

盆栽鉢にはどんなものがあるか

盆栽鉢の種類

盆栽に使用する鉢は、樹が若いときに培養するための仕立て鉢と、樹が成長してから生育するための化粧鉢(鑑賞鉢)の2種類があります。

仕立て鉢

仕立て鉢

ホームセンターや園芸店など、安価でどこでも手に入り、素焼きのもので赤みがかかっているものが多いです。通気性、水はけ、保温性などに優れており、根の発育もよく、樹の生育も早いです。一般的には大きさによって三号鉢、四号鉢などと言われています。挿し木、取り木、新木などの培養用の鉢として最適です。

果物や野菜が入っていたパックや発泡スチロール、木箱など、身近な容器に排水用の穴を開けて代用することもできます。

化粧鉢(鑑賞鉢)

化粧鉢

通常盆栽鉢といえば、化粧鉢(鑑賞鉢)のことを言います。この鉢によって盆栽の魅力も随分と違ってきます。化粧鉢は樹を引き立てる衣装のようなもの、と考えて下さい。

形だけにとらわれるのでなく、焼き上がりの具合や、陶土の種類なども考慮し、樹種や樹形にあったものを選びましょう。樹によく調和した化粧鉢によって、趣が格段に出て、樹も一段とすばらしく見えることでしょう。

盆栽に適した鉢とは

盆栽の鉢は、機能や見た目などについて基本的な条件を備えていることが肝心です。まず、植物を育てる鉢としての機能面での条件、鑑賞においての形状面での条件に合ったものを選びましょう。

樹と鉢のバランスをチェックする場合は、目線を鉢縁と水平になる位置から眺めるようにしましょう。

1.通気性がよい

植物の根は地中にて栄養分、水分を得、呼吸もしています。そのためには鉢の通気性がよいことが必須条件とも言えます。

通気性がよいと、放熱性もすぐれており、鉢中の温度も調整しやすくなります。内側に釉薬がかかっていると、鉢の通気性が悪くなり、根の生長に悪影響を及ぼしますので注意して下さい。

2.適度な排水性・保水性がある

鉢中が乾きやすいと植物の生長も悪くなってしまいます。水が抜けない状態も根腐れの原因になり、生育に悪影響を及ぼします。依って、適度な排水性、保水性があることが必要です。

排水性、保水性には鉢の素材、焼き方が大きく影響しています。釉薬のあるなしによっても変わり、あるものの方が保水性があります。鉢底の穴の大きさや位置によっても変わってきます。

3.熱を吸収しやすい

植物には生育に適した温度条件があり、根の発達においても鉢の中の温度が大事です。鉢は土中の温度に影響を及ぼすので、太陽熱を保ちやすい鉢を使うことで生育が助けられます。一般的には、素焼きの鉢は太陽熱をよく吸収し、保温性もあるので盆栽の生育に適しています。

真夏は、鉢中の水が溜まって温度が上昇し、植物の生育が悪くなることもありますので、鉢の持つ排水性によってカバーします。

4.見た感じ、樹に合っている

機能面とは別で、鑑賞面で、樹種や枝ぶりに合った鉢であるか、というのが重要です。加えて樹形や、樹の大きさなどによって、合わせる鉢も異なり、盆栽に仕立てる樹と鉢のバランスによって盆栽の価値が決まってくると行っても過言ではありません。

樹形によって、長方形がいい、楕円形がいい、横から見た時の姿はどうか、など鉢選びの定石もありますが、厳密に言うと決まった型はありません。それらを踏まえた上で、樹と鉢が調和するような鉢選びを楽しんで下さい。

5.大きさが合っている

樹に対し、大きすぎる鉢を使用すれば、見た目もですが、根が必要以上に広がってしまい、植え替えしにくくなってしまいます。

反対に、樹に対して鉢が小さすぎると、バランスも悪く、根詰まりを起こして、樹の生育が悪くなるばかりか、最悪の場合、樹を枯らしてしまいます。

樹の大きさを考慮して、ちょうどいいサイズのものを選ぶようにしましょう。通常、樹の高さと同じくらいの幅の鉢を合わせるようにすると、調和が取れます。

6.深さが合っている

鉢の大きさもですが、深さについても注意して下さい。浅すぎる鉢を使用すると、根の伸長の支障となり、樹の生長に悪影響を及ぼします。反対に、深すぎる鉢を使用すると、保温性が悪くなり、土中の温度も低下し、やはり樹の生育に悪影響があります。

樹の太さ、大きさを考慮して、ちょうどいい深さのものを選ぶようにしましょう。初心者の方はちょうどいい大きさと思ったものよりひと回り小さいものを選ぶといいかもしれません。樹の幹の直径と同じくらいの深さにするといいでしょう。

7.歪みがない

鉢底が平らでなかったり、鉢の形に歪みがあったり、鉢の足ががたがたしたりするものなどは、機能面、鑑賞面でもよくありません。

歪みによって、本来必要な鉢の機能、特に排水性に支障をきたして根腐れが起こる場合もありますので、歪みには注意しましょう。

盆栽鉢の基本的な条件まとめ

1.通気性がよい
2.排水性・保水性がある
3.熱の吸収がよい
4.見た感じ樹に合う
5.大きさが合う
6.深さが合う
7.歪みがない

鉢の形

鉢の形状分類

鉢の形状によって下記のように種類分けされています。

・楕円鉢
・丸鉢
・長方鉢
・正方鉢
・六角鉢
・梅形鉢
・袋式鉢
・下方鉢
・梅形鉢
・創作鉢

鉢の構成

鉢の形状分類

鉢は、幾つかの部位で構成されています。各部の名称は、縁(円)、角(かど)または隅(すみ)、胴(どう)、尻(しり)、足(あし)、穴(あな)などで成り立っています。

鉢の形状分類

縁の形状には主に「内縁」、「外縁」、「単口(ひとえぐち)」または「切立(きったて)」という3種類があります。

内縁……鉢の内側に縁が折れており、盆栽の中身は抜けにくくなっている

外縁……鉢の外に縁が付いている、沿っているもの

単口……鉢の縁が内側に曲がっていたり、外に反ったりしていないもの

玉縁……外縁が玉状になっている

縄べり……外縁が縄状になっている

角(隅)

鉢の角の形状のことです。四角形の角のように直角のものもありますが、角の部分が内側に入った「隅入り(すみいり)」または「入角(にゅうかく)」は、装飾性があります。

他、丸い角の「撫角(なでかく)」角を斜めに切った「隅切り(すみきり)」などがあります。

鉢の形状分類

胴は種類が多く、太鼓(たいこ)、鉄鉢(てっぱつ)、南蛮、反形、切立、椀形(わんなり・わんがた)、袋形、陣笠、鋲打、クラマなどがあります。

太鼓……胴に和太鼓に付いているような鋲が入っているもの

鉄鉢……僧が托鉢で食を受けるための鉢のような形をしたもの

切立……円筒形をしており、腰から口縁までまっすぐに切り立ったもの

椀形……お茶碗の形のようなもの

袋形……胴の上下が細く、真ん中部分が膨らんだもの

陣笠……円錐を逆さまにしたような形

鋲打……胴に鋲が付いているもの

クラマ……縁がなく変形しているもの

胴の模様

額入り……胴に四角い窓枠のような彫刻が施されたもの

窓入り……同部分に窓枠のようなものがあるもの

帯・胴紐……胴の周囲に帯紐を引いたような彫刻が施されたもの

彫入……銅に山水画や様々な模様の彫刻が施されたもの

盆栽鉢の足は、焼き物では高台(こうだい)と言われ、短いですが、様々な形状のものがあります。

切足(きりあし)……よく見られる四角い足

段足(だんあし)……足が2段式になっているもの

雲足(くもあし)……足にクモのような模様は施されたもの

鬼面足(きめんあし)……足が鬼面になっているもの

富士足(ふじあし)……足が富士山のような形になっているもの

盆栽鉢には、大きく分けると「泥物(でいもの)」と「色物」という2種類の色があります。

泥物……釉薬のかかっていない土の色合いを活かしたもの

色物……釉薬をかけ、鮮やかで色とりどりに仕上げたもの

さらに泥物も、下記のように分類されます。

鳥泥……土味を活かした焦げ茶色

朱泥……鉄さび色

緑泥……緑ががった色

桃花泥……黄みが強い茶色

ネズ(鼠色)……灰色がかった茶色

梨皮(りひ)……梨のように表面に粒状の模様がある

磨き……磨いて艶出しをしたもの

窯変(ようへん)……焼成した際の予期しない色や変形を呈すること

釉薬物


上部のような釉薬の内容に沿ったまとめ写真

海鼠(なまこ)……青みがかったもの

瑠璃……深い青みがかかったもの

均窯……薄群青のもの

辰砂(しんしゃ)……深い赤、血の赤色とも言われる

青磁……淡い青緑色の青

白交趾(しろこうち)……乳白色

青交趾(あおこうち)……鮮やかなブルー

上記の「交趾」とは、粘土を絞り出して文様を描いた素地の上に、鮮やかな色釉を盛るように厚くかけたもの。
立体的で重厚な絵付けは他にはない迫力があり、独特な手触りも楽しめる。本筆は黄、紫、緑などの鮮やかな色彩で焼成されており、日本においては、「交趾焼」と呼ばれて珍重されてきた。

「交趾」とは、本来は中国、前漢の武帝が南越を平定して設置した郡の名。現在のベトナム北部トンキン・ハノイ地方にあたる。のち、中国でのベトナムの呼称となった。

深さ(高さ)

[低い]

陶盤



中浅

中深

大深

懸崖(懸崖用の高さの比率が大きい鉢)

ラン鉢(ラン科植物に使うような高めの鉢)

[高い]

大きさ

鉢の大きさを表すのに、「号(ごう)」という単位が使われています。「号」は「寸(すん)」を言い換えただけのもので、1号=1寸=3cmです。

なぜ鉢のサイズの単位が「号」になったかというと、元々「寸」で表していた名残だそうです。大正時代1959年にメートル法が導入されて、寸尺の単位は禁止されています。

当時の人々は鉢を「寸」測ることになれていたので、「寸」を「号」に置き換えて使用することにしたと言われています。

号数は鉢の一番膨らんでいる、最上部の外側の直径を測っています。従って高さが同じであっても直径が違えば号数は異なります。

5号鉢と言えば、直径が3cm×5号=15cmとなります。角形の場合は1辺の長さを測っています。

注意すべきは、外側の直径なので、内寸でどれくらいの容量があり、どれくらいの大きさが植えられるかが縁の形状や、鉢の厚さによって違ってくるという点です。

鉢の種類

鉢は大別すると、素焼き鉢、朱温鉢・駄温鉢、釉薬鉢、焼締め鉢などがあります。

素焼き鉢

素焼き鉢

700℃~900℃くらいで焼いてあって、陶器自体に空洞が多い。空気を含みやすく、植物の根にとっては通気性がよく、夏は涼しくて冬は保温性があります。

前述のように、新木を大きくしたり、株を増やしたり、挿し木をしたりするのに使います。素焼き鉢の種類は生地に使う土の色によって、分類されます。

朱温鉢・駄温鉢

駄温鉢

素焼き鉢の中でも1000℃程度の高温で焼いた赤茶色の鉢のことです。上部の縁部分に釉薬が掛けられているのが駄温鉢、塗られていないものを朱温鉢と言います。

素焼き鉢より強度がありますが、通気性や排水性は素焼き鉢ほどではないですが、適度な保水性もあります。特に駄温鉢は保水性が1番高く、盆栽の培養に適しています。

焼締め鉢

焼締め

1100℃~1300℃程で釉薬をかけずに長時間焼成します。土の持ち味を活かした味のある風合いが特徴です。自然にかかる灰が自然釉となり、自然な模様や色の変化があります。

素焼き鉢と一見同じ用に見えますが、大きく違うのは焼くときの温度が違うのでまったく異なるものになります。素焼きの鉢は割れやすいのですが排水性がよく、焼締めの場合は素焼きよりも高温で焼くので、割れにくく水をあまり通しません。

釉薬鉢

釉薬鉢

一度素焼きをした後に釉薬をかけて1200℃~1250℃で焼きます。様々な色が付けられて、色のバリエーションが多いという点で選ぶ楽しさがあります。

釉薬をかけることで通気性は素焼き鉢に比べ、悪くなってしまっています。一派的には化粧鉢として使用されます。

鉢の産地

盆栽鉢は主に日本産と中国産がほとんどです。日本産は、常滑、瀬戸など各地でさまざまなものが作られています。

中国産は値段の安く、使い勝手のよい釉薬鉢がよく日本に輸入されています。

基本的には産地や鉢のネームバリューにとらわれず、樹との相性を優先させて鉢選びをするようにしましょう。一方、鉢選びを色々試す中で、好きな産地、窯などを見つけてうまく樹と合わせると盆栽の楽しみも増すかもしれません。

中国鉢

中国は陶芸において先んじており、美術品や骨董品として大変価値の高い陶磁器を輩出しており、支那鉢とも呼ばれています。

盆栽愛好家の中でも特に高級な盆栽を植えるために中国鉢が使用されてきました。盆栽鉢としては近年安価なものが多数流通していますが、中国産の鉢は陶土の質がよいので、保温性、保水性、通気性がよく、盆栽の成長にとってもプラスの面が多く見られます。中国鉢は、日本に渡来した時期によって区別されています。

■古渡(こわた)り

室町時代またはそれ以前に渡来したもののこと。鉢の形状、色彩、質など風格もあり、骨董品や美術品としても貴重なものとされています。

■中渡(ちゅうわた)り

明治時代に渡来したもの。盆栽用として最初から作られているので、盆栽培養にもすぐれています。この頃は、中国産の鉢は盆栽用として重宝がられていました。

■新渡(しんと)・前新陶(ぜんしんとう)

1920~1940年代に渡来したものを指します。日本の盆栽愛好家の好みに合った中国鉢の型のものを依頼した上で制作されています。改良されてきて、機能的にも形状的にも使いやすい鉢がたくさんあります。

■新々渡(しんしんとう)

1945年以降の戦後に輸入されたもの。数多く輸入され、価格も比較的安いものが多いです。

●大昭渡

大正、昭和期に中国で生産され、輸入されたものを言います。

●平成渡(へいせいわたり)

平成時代に、中国で生産され、輸入されたものを指します。大昭渡と平成渡は1994年に日本盆栽協会が中心となり、呼称を決めました。現在中国産は、安価な釉薬鉢が多く、使い勝手がよいものが多数輸入されています。

和鉢

日本では、渡来してきた中国鉢の影響を受けて、大正時代~昭和時代にかけて、盆栽鉢の生産が盛んになりました。生産当初は大量に作られたのもあってか、形状や質も悪く、安価で、培養用の鉢として使用されていました。

中国産の大量で安価なものが輸入されるようになってか、次第に、中国産の古渡のものを倣った素晴らしいものも作られるようになりました。

特に戦後、盆栽業界が活性化するにつれ(詳細は盆栽の歴史ページを御覧下さい)、中国産の不足と一時的な品質低下により、和鉢が重宝がられるようになりました。

戦後の社会情勢の落ち着きと共に、盆栽鉢の産地、常滑、信楽、瀬戸などを中心に、素晴らしい盆栽鉢が作られています。

鉢の呼び方

鉢に限ったことではありませんが、美術品には名称が付けられています。一般的には漢字表記ですが、近年記号や英文字表記することも一部増えています。

名前は単に呼び名だけでなく、その作品の特徴を現している場合が多くあります。呼び方としては、産地または作者、釉薬の種類、模様の種類、技法、作品の形、制作年代、蔵書(持ち主)などから取ります。

主には、産地か作者、色、形などから名付けられます

例)

松陶翠梨皮泥胴紐蕨足楕円
舟山切立長方鉢

盆栽鉢の産地

釉薬鉢

盆栽鉢は日本各地で特徴のある鉢が作られています。

日本の焼き物の産地と言えば、日本六古窯と言われる、越前(福井県)、信楽(滋賀県)、瀬戸(愛知県)、常滑(愛知県)、丹波(兵庫県)、備前(岡山県)が有名です。産地によっては美術品としても価値が高い、高値の焼締め鉢で有名なものもあります。

特に常滑は、盆栽鉢作りの歴史も古く、著名な盆栽鉢作家も輩出しています。瀬戸は、ホームセンター、園芸店などで販売されているような盆栽鉢を大量に生産している産地です。信楽は、植木鉢の生産も多い土地柄で、近年盆栽鉢の生産地として認知度が高まっています。

盆栽鉢を生産する主な産地と、焼き物の特徴について紹介します。

九谷焼(石川県)

石川県南部、金沢市、加賀市、小松市、能美市で生産される、色絵の磁器。江戸時代の古九谷をルーツにする九谷焼は、伝統を受け継ぎ、豪華で華やか、大胆な絵柄が持ち味です。色絵の美しさが一番の特徴です。

越前焼(福井県)

丹生郡越前町の宮崎地区、織田地区にて焼かれる炻器(せっき:陶器と磁器の中間的なもの)。平安末期に常滑の技術を導入し焼き締め陶を作ったのが始まりと言われています。使われる土には鉄分が多く風組まれ、耐火性も強いので、赤黒・赤褐色の焼き上がりとなります。

信楽焼(滋賀県)

甲賀市信楽を中心として生産される陶器。良質の陶土がでる土地柄で、温かみのある緋色の発色、焼成中につく薪の灰が釉薬代わりになる自然釉、灰が表面に溶けて付く灰被地など、素朴な土の味わいが特徴。たぬきの置物が有名。

京焼(京都府)

京都で焼かれる、清水焼、粟田焼などの陶磁器の総称。江戸時代初期頃から広がり、「特徴がないことが特徴」と言われるほど、特定の様式・技法があるわけではなく様々な技法が融合されています。

常滑焼(愛知県)

常滑市を中心とし、その周辺を含む知多半島で生産される炻器。すぐれた焼締め音技法が受け継がれており、酸化鉄を多く含む朱泥(しゅでい)と呼ばれる土を使うのが特徴で、焼き上がりは赤褐色の色合いになります。

瀬戸焼(愛知県)

瀬戸市とその周辺で生産される陶磁器の総称。1000年以上の歴史と伝統を誇り、器を「せともの」呼ぶのもここから来ています。釉薬を使いはじめたり、大量生産を可能にしたりと、日本の焼き物は瀬戸からはじまっています。

丹波焼(兵庫県)

丹波篠山市今立区付近で生産される陶器。平安時代から鎌倉時代が発症と言われ、独特な形状の登り窯で焼かれた器は、灰釉(かいゆう)や鉄釉(てつゆう)により、色や模様が1つずつ異なるのが大きな特徴。丹波立杭焼(たちくいやき)とも言われます。

備前焼(岡山県)

備前市周辺を産地とする炻器。平安末期から続いており、釉薬を使用せず焼締めにて制作されている。素朴な味わい、土の風合いで、あきが来ないのが特色。

有田焼(佐賀県)

有田町とその周辺地域で生産されている磁器。江戸時代後期に各地で磁器生産が始まるまで、日本で唯一の磁器生産地でした。歴史と伝統に裏打ちされた技から生み出された情感漂う染め付け、美しい色絵が特徴。

薩摩焼(鹿児島県)

児島市、日置市が産地。大衆用の日用雑器として焼かれていた陶器である黒薩摩(黒もん)、藩主御用達として利用されてきた豪華絢爛な白薩摩(白もん)という2つの焼き物があります。

盆栽鉢作家

作家鉢

盆栽鉢にも他の多くの美術品と同様に、作家ものが多数存在します。盆栽鉢にもすぐれた逸品が多数あり、初期の盆栽鉢作家のものは、骨董価値も高く、高値で取引されています。

中には盆栽鉢を中心に取り扱う古美術商や骨董屋もあるようです。オークションでも盆栽鉢が出品されています。

どこで購入するにしろ、商品の真贋、個人情報についてのリスクなどがありますので、販売者、出品者の信憑性を十分見極めて購入するようにしましょう。

作家ものの鉢だからといって、樹に合う、合わないはあり、やはり調和するものを選ぶのが鉄則ではありますが、作家ものの鉢は、鉢合わせの観点から試行錯誤を繰り返し、産み出されたものが多いので、合わせやすいかもしれません。

ご自分のセンスに合う、お気に入りの作家を見つけるというのも、盆栽道にさらに深く入っていくような楽しさがあるのではないでしょうか。

盆栽鉢の代表的な作家を紹介しましょう。

市川苔州(いちかわたいしゅう) 1897年~1971年

明治から戦前に活躍。平安東福寺と並んで盆栽界では著名な古典作家です。鉄分の多い、茶褐色の素朴な感じの風合い、銅を着色料として含む赤い釉薬:辰砂釉や酸化鉄を多く含み黒褐色に変色する鉄砂釉に逸品が多いです。無落款のものも多数。

井上良斎 初代:1828年生まれ

東京浅草で開窯。盆栽会においては伝説の陶芸家とも言われています。以降三代目に至るまでは「陶芸会の至宝」と言われるほどの活躍をしていました。作品は極端に少ないことで有名です。

2代目:1845年~1905年

尾張名古屋反御用庭焼師の個として生まれ、初代の養子となった1875年に後を継ぎました。後に横浜で作陶。

3代目:1888年~1971年 

初代井上良斎の長男。陶技を2代目に学び、17際で家業の陶磁器製造所を継ぎ、日本の近代陶芸音開拓者である板谷波山に師事しました。

永楽善五郎(17代目) 1944年~

京焼の家元の1つ。室町時代末期から千家十職の土風炉師を務めていました。初代から9代目までは西村姓を名乗り、主に土風炉を制作していましたが、10代以降は永楽姓を名乗り、茶陶も制作しています。モダンで美しい侘びを感じさせる作品を多く手掛けています。

植松陶翠(うえまつとうすい)[本名:植松長太郎] 1899年~1959年

東京滝野川生まれ。陶翠窯の歴史は明治時代までに遡り、小鉢界の歴史そのものと言われる存在。家業が瀬戸物問屋で、中国鉢、日本鉢の輸入販売で盛業。デザインを考案し、全国の陶業家に製作を依頼。店に住み込んでいた水野正雄、その兄春松らと鉢、水盤を制作。

小野義真(おのぎしん) 1839年~1905年

高知県の大庄屋の家の出自。明治時代の官僚、三菱財閥の礎を築いた実業家。趣味人で、盆栽、碁などを嗜み、中でも陶芸においては本邸内に窯を設けて、本格的な作陶を行っていました。特徴は釉薬の配合や温度など製作において緻密な調整を必要とする釉薬。

昭阿弥(しょうあみ)[本名:初代 高野網一]  1905 年~1993年

京都蛇ヶ谷にて開窯。昭阿弥窯は二代続く京焼の名家。茶道具を手掛けたり、数寄者からの注文に応じ、盆器を制作していましたが、その数は少ないとされています。染め付け、色絵、交趾といった豊かな色彩と、京焼の伝統を踏まえた作風は高く評価されています。

2代目 (本名進次郎) 1941年~

6人兄弟(男4人女2人)の次男。初代を師として、日本画を専攻し、大学院まで進み、卒業後すぐ、家業を本格的に手伝うように。2006年頃から角物も手掛けています。

舟山(しゅうざん)[本名:鈴木春司] 1928年~1988年

愛知県東郷街にて陶業。粘土を板状にして作品を作るたたらづくりで作陶。中国鉢の伝統に倣って一発仕上げの味のある鉢作り、日本人好みの新しい型・土肌を開発。舟山自身が盆栽愛好家であったため、機能美と実用性を備えた鉢づくりを行っていました。

秀峰(しゅうほう)[本名:片岡晋] 1944年生まれ

1923年創業の片岡陶園4代目に当たり、1974年に秀峰号を継承。釉色物中心に堅実な作風で知られ、小鉢から超大型の鉢までを制作。釉の使い方には独自の工夫が垣間見られ、煙では織部釉の発色に優れており、広東緑釉のような窯変には秀作が多いとされます。

竹本隼太[本名:竹本正典] 1848年~1892年

徳川幕府の旗本の家の生まれ。明治維新後東京小石川に含翠園を開窯して陶業を営みました。明治を代表する小鉢界の代表的な作家。当初は薩摩焼を写して、三彩から磁器へと移って、中国清朝の陶磁に影響を受け、各種単色釉に工夫を凝らしました。

平安東福寺[本名:水野喜三郎] 1890年~1970年

京都生まれ。盆栽界でもっとも名の知られた鉢作家。趣味の盆栽を生かして盆栽鉢専門の作家となり、1920、30年頃から40年程に渡り数万点の様々な鉢を世に送り出す。窯を借り、分業システムを取りました。登り窯を用いたため、鉢の風合いは1点毎に異なっています。

宮川香山(真葛香山)[本名:宮川虎之助] 1842年~1916年

京都の陶工の四男。19歳の時父と兄が亡くなって家を継ぎます。横浜に窯場を写し、薩摩国(鹿児島県)から取り寄せた土を用いて作った真葛焼を世に広めます。1945年に戦災により閉窯。色絵付けと立体造形力に秀でた作品を展開。盆栽鉢にも秀作が残っています。

中野行山(なかのぎょうざん) 1940年~

常滑で作陶。現在の常滑鉢作家の第一人者である佳山に師事。1972年に独立し、泥物鉢を専門にして、小型、中型、超大型、様々な大きさ、型の鉢を作陶しています。現在は大型鉢の製作を控え、タタラ・紐作りによる手作りの鉢を手掛けています。

佳山(けいざん)[本名:久田貞夫] 久田製陶所 1933年

戦後の常滑での盆栽鉢作りを支えた一人。先代の型・土目を継承し、泥鉢一筋で作陶、ミガキ手法を開発したことでも知られています。手作りの作品は、柔らかみのある線が特徴です。押型を使用した量産品にも独特の味があり、愛好者がいます。現在は鉢生産を休止。

呑平(のんべい)

本名も年齢もわからない幻の陶工と言われ、毎時末期から大正にかけて水盤の銘品を生み出しました。大酒飲みで、水盤を片手に里に降りてきては一升瓶と交換して、また山奥に入って行ったという伝説があります。明治時代の中期以降に制作した作品が皇居にあります。

樹種と鉢

松柏類

松柏類鉢

泥物と呼ばれる朱泥、紅泥、紫泥、鳥泥、梨皮泥(梨皮のような細点の見えるもの)など。松柏類には、以前から泥ものが使用されてきました。

釉薬のかかっていない土の風合いは、なんとも言えない風合いと落ち着きがあるので、松柏類の持つ品格と落ち着きが、より一層引き立ちます。

雑木類

雑木類鉢

1年を通して緑の葉が付いている松柏類と違って、新緑、深緑、紅葉といった葉の変化と、落葉した後の樹形が楽しめる雑木盆栽。それらに合った鉢の色は派手さを抑えたやや控えめな釉薬の鉢の色のものがおすすめです。緑、紅葉、落葉後をイメージし、鉢の色を選択するようにしましょう。

花物類

花の咲いた姿が基本的には鑑賞のピークとなる花物類。それぞれが白、赤、ピンク、青、黄色、紫など色とりどりの花を付け、その場を華やかに彩ります。そんな華やかな花の色を引き立て補うような、できれば花の色と同色にならない色にするといいでしょう。

実物類

実物類も身の付いた姿が鑑賞のピークとなります。やはり実の色を引き立たせてくれる鉢の色を選ぶようにしましょう。また、結実したときのバランスを考えてやや深めの鉢にするようにして下さい。

樹形と鉢

鉢

基本的には、幹の太い樹には重量感のある、どっしりとした鉢。幹の細いものには浅くて軽めの鉢、古木には趣のある落ち着いた鉢、柔らかい雰囲気の樹には、角がないもの、背高い樹には対照的に浅めの鉢などを選ぶといいでしょう。

樹形によってある程度はどんな鉢にするか絞り込めるので、見ていきましょう。

直幹

鉢

幹は真っ直ぐに伸び、根本から先端に向かって徐々に細くなり、枝葉のバランスも整っている、初心者にももっともわかりやすい樹形の1つです。

持ち味を活かすためには、浅型の楕円形や長方形の鉢を選びましょう。幹の太さによって深さのある鉢にします。枝部映画よく、力強くどっしりとした感じの樹には鉢の縁に縁があるもの、幹が細い樹には細長い短冊鉢が適しています。

斜幹

崖や海辺の傾斜地で強い風を一方向から受けて、反対側に傾斜した樹を表していますので、傾斜地を表現するために中深鉢を選ぶといいでしょう。

鉢とのバランスがとても重要で、植え付けの位置を、傾いて下がっている方を広くとるようにすると安定感が出ます。どっしりとして豪胆な松柏類には長方形の鉢、柔らかな感じの雑木類には楕円鉢が調和が取れるでしょう。

模様木

大体がアルファベットのSを彷彿させる形で、曲線を描いています。そのバランスの重量感と安定感に見合った鉢を選ぶと引き立ちます。浅い鉢ですと軽すぎますし、深い鉢ですと安定感に欠けますので、中深の鉢にするようにしましょう。但し、幹模様に依っては浅い丸鉢が適当です。樹形に力強さがありますので、茶色や褐色の自然な風合いの鉢が合うでしょう。

懸崖・半懸崖

鉢

樹の先端部分が鉢縁よりも下にあるものを言うので、調和をとるために深めの正方形の鉢、六角鉢、丸鉢が合うでしょう。また、半懸崖では幹の立ち上がり具合、樹の流れ具合によっては楕円形や皿型をした浅めの鉢も適しています。

株立ち

根元がつながった3本以上の多幹が地際から立ち、大木感を表すものです。樹に引き締まった感じと落ち着きを出すために、浅めの丸鉢や縁のない切立の長方形の鉢と合わせるといいでしょう。樹種によっては中鉢も合います。

寄植え・根連なり

根連なりは本来1本の植物ですが、両方共に複数の樹が同じ鉢中に植えられた姿をしていますので、大地に連なって生えるような自然の景色を表すには、控えめな趣の長方形や楕円形の浅鉢が適しているでしょう。

文人木

鉢

細い幹が上方にひょろりと伸びた軽快な姿をしていますので、雰囲気を引き立てるように軽い感じのする丸鉢や正方形の鉢が合うでしょう。浅型や中型鉢の方がより引き立つでしょう。

石付き

鉢

断崖絶壁や孤島を彷彿とさせる石付き盆栽は、石に樹を植え付けて仕立て、木と石の調和で見せるもの。石付きに向いている水医師は形に起伏や変化のある立石や平石の形をしたものです。浅い水盤に砂を敷いて鑑賞したり、浅型の丸鉢で仕立てたりします。

鉢の手入れ

盆栽は、自然の縮景を盆の上に表す、という概念が根底にありますので、何十年、何百年という樹姿を写すものでもあります。樹齢と関係なく古さを感じさせる樹を「古色(こしょく)がある」と言います。

古色、樹が纏う古代感、歴史感などを表現する際に、鉢が合ってないものですと、樹と器の鉢合わせがうまく機能していないということになってしまいます。

では、ただ単に古い器を使えばいいのかというとそうでもありません。手入れをせず、泥やカルキが付着してしまった鉢は単に汚れた鉢になってしまいます。

また、古くて趣のある鉢は骨董としての価値が付き、価格的にも、心情的にも気軽に日常使いの鉢にする、というわけにはいかないと思っている方もいるかもしれません。眺めて満足される方もいらっっしゃるようですが、埃を払ったり磨いたりといったある程度のお手入れは必要です。

鉢のお手入れは、樹とは違い、手入れをしなければ樹が枯れてしまう、というような差し迫ったものではないので、収納や保管に気を配るのが第一ですが、たまには手入れをするようにしましょう。

お手入れも含め、樹に合うように鉢を育てていくことも含め、盆栽作りを楽しみましょう。

鉢の磨き方

水やりで、カルキのミネラル分や肥料の成分が鉢に付いて、白くなってこびりつくことがあるかと思います。
これに関しては、濡れた布で、時折拭いて、付着しないようにしましょう。

こびりついてしまってなかなか取れないという場合は、クエン酸や酢を含ませた布で拭き取るか、水を張ったバケツにクエン酸や酢を適量入れて、浸しておくという方法があります。

因みにクエン酸は、ドラッグストアやホームセンターなどで販売されており、容易に手に入ります。汚れ具合や浸す鉢の数、大きさなどによって、水やクエン酸の量、浸す時間、日数など調整するようにして下さい。

浸した後は、スポンジやたわしなどで、鉢によっては表面が傷つかないように擦り落とすようにしましょう。汚れを落としたら、クエン酸が植物に影響する恐れがありますので、薬品が残らないようしばらく水に浸けておくといいでしょう。

鉢

その他、盆栽道具のサビ落としに使われる「クリーンメイト」や「サビトール」なども盆栽鉢の汚れ取りに使うことができます。

「クリーンメイト」も、消しゴムと軽石の中間のような感触で、消しゴムで鉛筆を消す感覚で汚れを落とせます。両方共、使用の際には、肌や髪のお手入れにも使用される椿油を少量浸けてから使用するにようにしましょう。

「サビトール」は弾性の研磨剤で、目の細かさも、細目、中目、荒目とありますが、盆栽鉢には中目を使用するにすればいいかもしれません。

こすりすぎて、鉢に傷がつかないように気をつけましょう。汚れを取り除いた後も、「椿油」を使ってつやを出します。布に椿油を付けて鉢によく刷り込んで仕上げましょう。

鉢に古色を出す

古色のある樹に合わせる鉢も、同様に古びた感じが調和します。すでに年代物、骨董物の鉢も存在しますが、大抵は、ネット通販や盆栽店などで購入することが多いでしょう。

新しい鉢を購入したら、野外に並べ、雨風にさらすようにしてみて下さい。しばらく経つと、使い古したような味わいがでてきます。このように時代が付いた鉢は、古色のある樹とも調和が取れます。

並べる場合は、できればござやかごなどの上に、鉢底を上にし、重ねないようにします。軽いものであれば強風で飛んだりしないよう、注意しましょう。

また、古色を出すため、盆栽鉢として使用する前に、手軽に育てられる草花を盆栽鉢で栽培したり、土だけ暫く入れておいたりしてから、盆栽鉢として利用するという方もいらっしゃるようです。

オリジナルの鉢

盆栽鉢は、盆栽専門店、園芸店、ホームセンターなどで販売されており、気に入った鉢を見つける楽しみというのもあるかもしれません。

既存品から見つける楽しさもあるかもしれませんが、身の回りのものを鉢として代用したり、自分で作ってみる、というのも盆栽愛好の醍醐味として加えてみてはいかがでしょう。

身の回り品での代用
 ◆湯呑
 ◆コップ
◆片口
 ◆小皿
 ◆茶碗
 ◆楊枝刺し
 ◆ピッチャー
 ◆貝殻
 ◆瓦
 ◆竹筒

など、小さな器であれば代用できるかもしれません。どんな樹をどんな風に植えたらいいか、構想を練るところからはじめてみましょう。

 →選び方のポイント
 ・排水孔が開けやすい
 ・樹形と合っていて、なおかつ植え込みやすい形かどうか
 ・色が合っているかどうか(※ご自分で着色もできます)

作り方

1.排水孔を開ける。

湯呑やコップなどはわれやすいので、いきなり釘を打ち付けないようにして下さい。器の中に砂や布を詰めて、タガネで軽く叩いてみて下さい。くぎやキリを使ってもいいでしょう。

また、市販の電動ドリルでも孔を開けることができます。(下記に開け方を説明しています)直径や5cm以上のものには孔を2箇所程開けるといいでしょう。底に曲線部分や傾いた部分があるものは,みずがたまる部分に孔を開けて下さい。

2.足をつける。

足が必要なものには、木片やガラス、金属などの4足の形状や高さが揃った足を、接着剤で鉢底に付けます。接着剤は材質にあったものを使用するようにしましょう。

※木製、竹製で腐りやすいものは、ビニールを敷いたり、防腐剤を使用したりして工夫して下さい。

※平たいものは、水苔で土手を作ってから、土手の内側に土を入れるようにしましょう。

電動ドリルでの孔の開け方

[用意するもの]
・鉢として使用する器
・電動ドリル
・霧吹き
・鉢底ネット

開け方

1.器をふきんの上に置きます。
2.孔を開けるポイントを決める。
3.孔を開ける周辺を霧吹きで濡らす。
4.電動ドリルで孔を開ける。
5.孔部分に霧吹きで水をかけながら削る。
(※電動ドリルは使用法に沿ってご使用下さい)
6.孔を開けたら、孔周辺を削って孔を広げる。
7.鉢底ネットを張る
8.足を付けます。

孔を開けずに作る方法

器を再利用したいので、孔を開けるのに抵抗がある、または豆盆栽を小さな器に植え替えたいという場合、孔を開けずにすむ方法がありますのでご紹介します。

[用意するもの]
・茶こし(用意する器の大きさに合ったもの、鉢にしたい器よりひと回り小さいもの)
・湯呑、そばちょこ、小鉢など

作り方

1.茶こしに用土を入れ、盆栽になる樹を植える
2.1を好みの器に入れる

※水やりは盆栽鉢から茶こしごとはずして行う。

※盆栽鉢に水がたまると根腐りの原因になりますので注意しましょう。

盆栽鉢作り

樹も成長に依って姿形、趣も変わっていくもの。微妙な変化に合わせて、樹の負担を鑑みつつ、盆栽鉢も洋服のように取り替えられたら盆栽の楽しみも増すかと思います。比較的簡単に作ることのできる鉢作りについてご紹介しましょう。

鉢の作り方

[基本的な道具]

○陶芸粘土(市販されている陶芸用の粘土)
○粘土板
○コテ、ヘラ
○家庭用電気窯orコンパクト電気窯

作り方画像orイラスト

作り方

1.土を準備します。

土を練って空気を抜き出します。水を加えて成形しやすいようにします。

2.粘土を団子状にまとめます。

3.台の上に置いて、親指を粘土中央に突っ込んで、他の4指を外側に付けます。そのまま、粘土をつまむようにしながら、穴を外側に広げていきます。

4.粘土で小さなお団子を4つ作ります。

5.形ができましたら、4つのお団子をひっくり返して足として付けます。ヘラで形を整えます。

たたら作り

1.粘土を板状にします。

長方鉢の場合 同じ高さ長さ厚さのものを2枚ずつ 計4枚
底:1枚
縁:同じ高さ長さのものを2枚ずつ 計4枚
足:同じ高さ長さのものを 4つ

2.板状にした粘土を張り合わせます。

手ひねり、ひも作り

作り方画像orイラスト挿入

1.粘土を手で丸めます。

2.台の上に置いて、親指の付け根のふくらみで中心周辺そ少しへこませるように軽く叩きます。周りを叩いて縁を軽く盛り上げます。

3.手を湿らせて、片手に握れる程度の少量の粘土を取って両手を前後に動かして先(下方)を尖らせます。

4.尖らせた方を小指の太さにします。

5.紐状にした粘土を重ねて、下へ下へと力を加えてひも状のものを作ります。一段、ひも状のものを輪にして余分な粘土を切り取ります。

6.下から上に側の粘土を挙げて少しずつ紐状のものとつなげていきます。内側は上から下にひもの3分の1をこすり付けます。

7.これを繰り返して、厚みが4~5mmになるまで上に伸ばします。

8.最後に足を付けるか、削り出します。

他手廻しろくろ、小型卓上電動ろくろ、電動ろくろなどを使って作ると、成形に慣れれば均一感のある鉢を作ることができます。

成形後は……

素焼き/焼成

成形した作品はゆっくり乾燥させます。

しっかり乾燥させた後、素焼きをします。

※窯は家庭用電気窯、コンパクト電気窯、プロ向けのガス窯、灯油窯などがあります。(安価なものは7万円代からあります)

素焼きは焼き上げるための準備段階です窯の使用法は窯によって違いますので、説明書を御覧の上、注意事項を守ってご使用下さい。

焼成をする

陶磁器の製造工程の最後に行われる高温での加熱工程を指します。

素焼きをした後、鉢に釉薬を塗って、高温で釉を溶かします。釉薬は陶器の表面をガラス質で覆って、強化するもので、塗ることによって鉢の表情ががらりと変わります。

釉を塗る前に、お好みで着色剤を混合した色釉(いろぐすり)をかけたり、絵付けをしたりします。

家庭用の電気窯やコンパクト電気窯で再び焼きます。

成形だけして、陶芸教室で焼いてもらうという方法もあるようなので、お住いの地域の陶芸教室に問い合わせをしてみてもいいかもしれません。

陶芸は土を触って、慣れることがとても大事で、作らないと上達しないと言われています。息抜き代わりに、ご自宅での盆栽鉢作りに挑戦してみて下さい。

自宅ではスペースや作陶に不安があるという方は陶芸教室に通ってみるか、体験に行ってみてからご自宅での盆栽鉢作りをはじめてみてはいかがでしょうか?

より気軽に盆栽鉢を……

ヤコのオーブン陶土画像

また、自宅で、低温度(180度以下)の焼成で実用強度が得られる特殊陶土「ヤコのオーブン陶土」は、料理用オーブンで焼成できるので、気軽にオリジナルの盆栽鉢を作ることができるのではないでしょうか。

盆器鉢その歴史

慕帰絵詞

盆栽鉢をより楽しむためにも、盆栽鉢の変遷・歴史について、盆栽の歴史ページでも述べられていますが、説明しておきましょう。

盆栽の歴史のページでも触れたように、839年、河内の国(現大阪府)の農民が、自宅に咲いた橘の花を瑞徴(ずいちょう)ではないかとして、橘の木を「土器」に植えて、仁明天皇(810~850年)に献上したという記録が、平安時代に成立された歴史書『続日本後期』にあります。

藤原氏一門の繁栄を祈願するために春日明神から受けた加護と霊験を綴った絵巻物『春日権現験記絵巻』(推定1309年制作)には、蓮の葉の文様が浮き出た青磁の鉢に載せられた盆山が描かれていました。

平安後期の歌人西行の生涯を描いた絵巻『西行物語絵巻』(13世世紀後半の作)には石付きの樹を木製の石台に飾る盆山が描かれています。

→鎌倉時代には盆山が成立していたのではないかと考えられます。

1976年に韓国新安沖海底より中国の貿易船が発見され、1323年の日付の東福寺宛の荷札の陶磁器が見つかっています。その中には中国龍泉窯で焼かれた何点かの青磁の植木鉢が含まれていました。

京都市埋蔵文化研究所に京都市から発掘された青磁の植木鉢が所蔵されています。本来は水指であったもの、しかも同様の品が国の重要文化財に指定されているようなものに孔を開けて、植木鉢に転用していたようです。

西本願寺に伝わる14世紀前半の絵巻物『慕帰絵詞(ぼきえことば・1351年制作)』には瓦器と呼ばれる白い模様の入った灰色の素焼きのものに、白い玉砂が敷かれ、双幹、斜幹などが植えられているのが見られます。

室町幕府と禅寺との公式記録『蔭涼軒日録(おんりょうけんちろく)』という史料には、八代将軍足利義政(1436 年~1490年)の盆栽についての記録があります。義政は非常に盆栽好きで、使用された鉢も立派なものが多く、青銅や青磁で、方形や円形のものもあったようです。

将軍の命により、禅宗の寺院から集められた「盆山」についての記述もあります。これらは石に植物を根付かせた「石付き盆栽」の祖先と言えるものでしょう。

江戸時代には、世界に類を見ないほど園芸が発達し、盆栽も町民から大名まで幅広く広まり、大名の間では盆栽の一大ブームが起こりました。

花壇綱目

この期には、『花壇綱目(かだんこうもく:水野忠勝著)』、『長生花林抄(ちょうせいかりんしょう:伊藤伊兵衛著)』、『草木育種(そうもくそだてぐさ:岩崎灌園作)』、などの園芸の手引書、解説書も多く出版されています。
各種園芸が盛んになっていたこともあり、食器や瓦などの生産地でも鉢が製造され、栽培、鑑賞用の鉢も作られるようになりました。

中国から、植物栽培用に製造された鉢の輸入もされるようにもなりました。また、江戸時代の最大の特徴の1つは、斑(ふ)入り、矮小、は変わりなどの奇樹異草を愛でたことです。

草木錦葉集

『草木錦葉集(そうもくきんようしゅう:水野忠暁著)』、『草木奇品家雅見(そうもくきひんかがみ:青山金太著)』が奇品ばかりを集大成した図譜となります。

奇品を求める流行に影響されたせいか、江戸時代の盆栽も「蛸づくり、値上がり、篠づくり」といった樹形が好まれ、鉢の種類は少なく、風格にも欠けていたようです。

京都・大阪地方においては、俳人で南画家(※中国の南宋画に由来する日本的解釈の江戸時代中期以降の画派・画様。文人画)である与謝蕪村や国学者で小説家の上田秋成などが中心となり、中国の古くからの思想・学問・慣習などを深く研究し、文人趣味が生まれています。

束縛を嫌い宮仕えを辞めてしまった知識人、富裕で高い教養を身に着けた町人など、文人たちの風雅な煎茶の席に置かれる盆栽は、机上や床脇に置かれるよう飾られるようになり、盆栽も席に合った風流なものとなっていきました。

そのせいか、江戸に比べ、京都・大阪地方では、盆栽の樹姿にも品格があり、鉢の種類も豊富でした。

江戸時代後期から明治期にかけては煎茶会を記録した「茗讌図録(めいえんずろく)」が相当数刊行されており、当時の煎茶会でどういった盆栽が飾られていたかを確認することができます。

青湾茶会図録
青湾茶会図録

著名な南画家である田能村竹田(たのむらちくでん)の養子である田能村直入(ちょくにゅう)著の『青湾茶会図録』(1863年刊)に、盆栽についての記述があります。

盆栽  青玉小盆。水養石勝負生石者

盆栽  交趾窯。白磁方盆。養湖石小竹。有壇座

盆栽  交趾窯。海鼠色磁大盆。養石菖蒲。俗曰針舗。有壇座 

上記から、席に3つの盆栽が飾られ、鉢の色、交趾、海鼠色磁、種類、竹や菖蒲など何の植物だったかなどがわかります。

明治時代に入ると、現代の盆栽の土台となるものが出来上がります。自然の景観を重視した自然樹形を目指す、「自然盆栽」が興り、針金かけによる整枝法が開発されたことが、現代の盆栽界に大きな影響を及ぼしていき、鉢についても探求、研究がなされていきます。

伊藤博文、大隈重信など明治時代の新しい政府要人の間でも、盆栽愛好の風潮がさかんとなりました。東京でも次第に煎茶が流行し始め、関西流の文人盆栽が好まれるようになります。明治政府の下で、財閥、各種企業が台頭し、これらの層に盆栽が広く愛好されるようになりました。

煎茶から独立した盆栽は、急速に広まり、新興の中小企業主、商店主などが、盆栽作りの愛好会、研究会などを作りました。1900年頃には、自然の景観の中に、樹形、樹姿を求める、現在の芸術的な盆栽の型ができ上がりました。

直幹、懸崖などの他に、斜幹、双幹、根連なりなどの、樹形が確率したのもこの頃です。

盆栽熱が高まっていくにつれ、盆栽の研究家たちは、盆栽の風格を上げるが如く研究に努めました。その結果、栽培においても観賞においても、「泥物」の「支那鉢(しなばち)」が、最も優れた鉢であるということを発見しました。

明治時代中期以降は、この鉢が広く使われることになりました。この頃、中国の宜興窯(ぎこうよう ※中国江蘇省宜興近郊の陶窯。中国八古窯の1つ)にて、「泥物」、「支那鉢」などの盆栽鉢が当時の日本の盆栽人からの注文により、製作されています。東京でも、宜興鉢を真似て、多くの朱泥鉢が大量生産されています。   

前述しましたが、江戸時代以前のものを、「古渡り(こわたり)」、1890~1920年代のものを「中渡り(なかわたり)」、1920~1940年代のものを前新陶(ぜんしんとう)あるいは、新渡(しんと)、1945年以降の鉢を新々陶(しんしんとう)と呼んでおり、います。中国産の鉢の輸入は盆栽の発展、大衆化にも寄与しています。日本の盆栽鉢の発展も支那の技術に多大な影響を受けています。

明治・大正時代は盆栽文化の隆盛と共に、日本の生産者も鉢づくりの先進国支那の技術に倣った作風のものを多数製作しました。常滑でも、1893年~1894年(明治26~27年頃)、宜興風の盆栽鉢が作られるようになりました。大正時代は、明治時代から続く、盆栽の大衆化の流れが一層強まり、展覧会も活発に開かれるようになります。

盆栽ブームを下支えするさまざまな盆栽専門誌が刊行されたのもこの頃です。1921年(大正10年)には「大日本盆栽奨励会」が発足し、機関誌『盆栽』を創刊しました。以降、盆栽関連の本が多く刊行され、大衆の間でも盆栽が芸術として広く認知されるようになってきました。

盆栽が芸術として押し上げられていく風潮に伴ってか、大正期から昭和初期の常滑では、「大正常(たいしょうとこ)」と言われる泥物を活かした、格調の高い風雅な盆栽鉢が作られるようになりました。昭和には盆栽が芸樹として押し上げられるべく、展覧会が相応の場所、主催にて開催されています。

1927年(昭和2年)には、機関誌『盆栽』主催で朝日新聞社講堂にて「明治大正昭和盆栽銘品展覧会」が、1928年(昭和3年)には昭和天皇御即位記念泰祝事業として「全日本盆栽展」が、東京市主催で、日比谷公園広場で、1934年(昭和9年)には東京府美術館にて「第1回国風盆栽展」が開催されました。このような展覧会を通して、盆栽の芸術としての地位がより確立されていったのです。

昭和時代の戦後の経済成長と共に、盆栽ブームも幾度か大きな波が興ります。中国鉢が日本に入って来なかったり、この頃の品質の低下もあったりして、和鉢の需要が高まりました。常滑のような盆栽鉢の生産地も多大な恩恵を受けました。

日本の、主な焼き物の産地、常滑、四日市、瀬戸、信楽、京都などでも盆栽鉢の製作も盛んになり、著名な作家物も数多く算出されました。井上良斉、植村陶翆、小野義真、真葛香山、竹本隼太、市川苔州、加藤三銀などが人気を博しました。

1980年後半、昭和末期からのバブル崩壊、日本における経済低迷により、盆栽愛好も下火となり、中国からはかつて常滑が模倣していたような古いものが輸入されるようにもなりました、

モントリオールの植物園温室

植物園温室

昭和の盆栽ブーム期の生産量に到達するまではいきませんが、若い層にも盆栽愛好家が増加しています。現在の生活環境では、盆栽の小型化に伴い、小品盆栽、豆盆栽などが流行し、鉢も小さいもの中心に生産されているようです。

海外でも「BONSAI」が広く認知され、世界各国に盆栽愛好家が現れ、盆栽愛好会ができるほど広まっています。
それと共に、日本の盆栽鉢、産地も注目を浴びています。

昭和の時代に生産された和鉢の素晴らしさが再考され、国内外の熱心な愛好家からの需要も高まっています。

鉢選びについて

鉢選び

最後に鉢選びについての極意について記しておきましょう。

最初はどんな鉢に植え付けていいのか感覚がつかみにくいかもしれませんが、できれば実際に幾つかの鉢に載せてみてバランスのいいものを選ぶといいでしょう。迷った場合は盆栽を楽しむ上で、鉢選びに厳格なルールはありませんので、直感でも好みの鉢を選んでみて下さい。

盆栽はあくまでも、樹、草という生き物が主役です。鉢は、樹や草を育てる上で機能的に重要な役目を持ちます。鉢を選ぶ際には、鉢底に穴があって、高台や足のついたもの、鉢の内側に釉薬がかっていないものなど、通気性や排気性を考えて選ぶようにしましょう。

回を重ねて、機能面もクリアした上で、鉢と植物の「鉢合わせ」のコツをつかんでいって下さい。そのためには、よい盆栽をたくさん鑑賞し、樹だけでなく、どんな鉢を使っているのだろう、この樹形にはこの鉢が合うなど、色合い、形、大きさ、深さなど、樹のバランスに注意し、鉢、鉢合わせ、鉢映りについての鑑賞眼も養うようにしましょう。

樹種や樹形などによっての鉢合わせも紹介させて頂きましたが、盆栽だけではなくあらゆる分野において、セオリーを超えて産み出される美しさというものがあります。

盆栽の「鉢合わせ」も、最終的には直感で決めることとなるかもしれません。直感で決めるからこそ、盆栽の本来持つ意味を理解し、基本や伝統に裏打ちされたバランス感覚を自分のものにしておくということが、大事になってくるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

小林真名実

小林真名実
福井県出身。関西学院大学卒。雑誌・書籍・ウェブ・携帯サイトの編集に従事。その後、日本の映画・放送・アニメーションなどのコンテンツ産業を国際競争力ある産業とするNPO法人にて広報、戦略室業務などを担当。その後、出産を経て夫の転勤に伴い香川県に移住したことをきっかけに盆栽を知る。日本の伝統文化である盆栽の奥深さを世の中に伝えたく盆栽総合情報サイトの立ち上げに参画。編集長に就任する。
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