季節ごとの盆栽の管理

季節ごとの盆栽の管理

春夏秋冬 季節に合わせた盆栽の管理でシーズンベストの状態に

盆栽は観葉植物と違い四季のある植物です。四季があるということは季節に応じて育て方や管理方法が変わるということ。ここでは季節に応じた盆栽の育て方を解説します。しっかりと環境に合わせた管理ができることで盆栽はその季節に輝きをますでしょう。

季節ごとの管理

盆栽を生育する上で、春夏秋冬の気候に合わせて管理の仕方が違ってきます。特に気を付けて管理しなければならないのは夏と冬の季節です。

私たち人間が、季節ごとに快適な住環境を求めて工夫をするように、盆栽も季節によって生育環境を整えてあげなければなりません。

春は新芽や満開の花、夏は新緑、秋の紅葉、冬枯れの寒樹など、季節により盆栽の鑑賞の楽しみ方も違ってきますから、季節に合った管理を覚えて実践していけば、盆栽に愛着が湧き、手をかけられて生育した樹も生き生きとし、長く盆栽を楽しめるのではないでしょうか。

春・秋

過ごしやすい春や秋は、日照や気温も比較的安定していて、人間にとっても植物にとっても過ごしやすい季節です。日当たりがよく、十分に風通しのよい場所に置きましょう。

盆栽は鉢が小さく、土の量が小さいため、こまめに水やりをしなければいけません。真夏は水切れを起こしやすいので、梅雨入りくらいから、土が乾いていないかどうか、頻繁にチェックするようにしていきましょう。

夏の強い日差しに当たりすぎると、暑さに弱い種類の樹は夏バテを起こしてしまいます。特に葉物、花物、実物の樹は葉が傷んだり焼けたりしていまします。

高温に弱い高山性の植物も夏の日差しから保護してあげましょう。暑さに強い樹でさえも、盆栽の鉢には熱がこもりやすくなってしまうので、強い日光に当たらないようにする必要があります。

日光を避けるために、直射日光が当たる時間帯に、大きな盆栽や庭木などが作る庭木の陰、軒下などに盆栽を入れてあげましょう。

自然に日陰を作りにくのであれば、直射日光を避けるために、遮光ネット、寒冷紗、すだれ、よしずなどを使って半日陰の状態にします。

遮光の方法一覧

遮光ネット

材質:ポリエチレン製
遮光率:40から80%くらい
色:白・黒・銀が多など

・用途は主に農業用
・風通しもよく風に煽られにくい

寒冷紗

材質:麻、綿、ポリプロピレン
遮光率:20から50%くらい
色:白、黒、グレーなど

・防寒、防風、防虫の目的で使われる風通しはあまりよくない
・カットして使える

防風ネット

材質:ポリエチレン
遮光率:10から40%くらい
色:青、緑、黒、グレー、銀など

・5月~6月位までの日差し程度なら
・カットして使える

すだれ

材質:細く割った竹、葦、最近ではポリプロピレン製のものも
遮光率:50%から80%くらい
色:ポリプロピレン製のものは水色、緑色などバリエーション豊富

・基本は吊るして使う

よしず

材質:葦、最近ではポリプリロピレン、合成樹脂製のものも
遮光率:50から70%くらい
色:ポリプロピレン、合成樹脂製のものは緑、銀など

・基本はたてかけて使う
・すだれに比べサイズが大きい

遮光の方法

特に7から9月の直射日光は強すぎるので、正午から午後3時位までの日光を遮るようにして下さい。西日にも注意しましょう。最近では温暖化の影響で、5月位から日差しが強いので、地域やその年の天候によって防御策を取る時期を判断して下さい。

周囲に打ち水をするという温度の下げ方もあります。鉢の数が少ない場合や、多くても苦にならないのであれば、日中は鉢ごと日陰に移動させてもいいでしょう。

また、鉢と鉢の間隔を十分に空け、風通しをよくしておきましょう。もちろん、真夏の日差しで熱くなったコンクリートや岩の上に直接置くなどはトラブルの原因になるのでやめましょう。

夏に弱い盆栽樹種

機種によっても、高温や夏の強い日差しに特に弱いものがあります。葉焼けをしやすい葉物類、耐寒性が弱い、寒帯~亜寒帯に自生する植物や、山などの高地に生える植物などは、特に暑さ・日差し対策を講じないと、美観を損ねたり、夏の間に枯れたりしてしまうことがあります。

夏に弱い盆栽樹種一覧

松柏類

イチイ、エゾマツ、カラマツ、コメツガ、ゴヨウマツ

葉物類 

イチョウ、カエデ、ケヤキ、ソロ、ツタ、ハゼノキ、ヒメシャラ、ブナ、モミジ

花物類 

桜、シャクナゲ、夏椿

実物類 

アケビ、カイドウ、

草物類 

シダ類、山野草の一部

暑さ日差しに強くても鉢が小さい場合は夏のトラブルが起こりやすくなりますので、ご注意下さい。針金かけや植え替えなど、植物に負担のかかりやすい処置をした直後も同様です。

樹名 暑さ 乾燥 ひなた管理 半日陰 日陰 夏期水やり 備考
アカマツ 強い 強い 2回
イチイ やや弱い やや弱い 2~3回
カラマツ 弱い やや弱い 2~3回
エゾマツ 強い 弱い 3回
コメツガ やや弱い 弱い 2回
ゴヨウマツ 強い 強い 2回 西日に注意
シンパク 特に強い 特に強い 2~3回 湿度に注意
スギ やや弱い やや弱い 2回
ヒノキ 強い 特に強い 2回
ニシキマツ 特に強い やや弱い 1~2回 水切れ注意
イチョウ やや弱い やや弱い 2~3回 水切れ・葉焼け注意
カエデ やや弱い やや弱い 2~3回 湿度・葉焼けに注意
クワ 強い やや弱い 2~3回 水切れ注意 
ケヤキ 強い やや弱い 2~3回 湿度に注意
ソロ 強い やや弱い 2~3回 水切れ注意
ヒメシャラ やや弱い やや弱い 2~3回 風通し・葉焼け注意
ハゼノキ やや弱い 2~3回 水切れ注意
ブナ やや弱い 2~3回 水切れ・葉焼け注意
モミジ やや弱い 2~3回 湿度・葉焼け注意 
ウメ 2回 水切れ注意 
ハナカイドウ 2~3回
サクラ 2~3回 葉焼け注意
サツキ 強い 強い 2~3回 西日に注意
サルスベリ 強い 強い 2~3回
フジ 弱い 2~3回
ボケ 特に強い 弱い 2~3回
アケビ 2~3回
ウメモドキ 2回 西日に注意
カリン 強い 2回
キンズ 特に強い 2回
ヒメリンゴ 2回 西日に注意
ピラカンサ 特に強い 強い 2回
ベニシタン 特に強い 2回

夏の置き方 例

夏に弱い樹種、葉焼けを起こしやすい樹種はすだれやよしずなどで多い半日陰に。

→その際、どの方向から日光や熱がくるのか見極めること!

風通しをよくするために、遮光するものから盆栽を少し離し、盆栽と盆栽の間隔を適度にとりましょう。
 

植物は季節によって、活発に活動したり、休眠したりします。植物が休眠している冬の間は、温度の低下に関しては、さほど心配する必要もないのですが、強い北風や霜からは守ってあげなければなりません。

冷たい北風にさらされると、蒸散(※植物の体内の水分が水蒸気となって放出される現象)が激しくなって、枝枯れを起こすこともあります。

冬の寒風を防ぐためには、風のくる方向によしずや板などで防御壁を作ってあげます。霜が降りそうな日は、あらかじめ夜のうちに、縁の下、軒下、棚下などに移動しておきます。

室内に移す場合は、暖房のきいた部屋は乾燥が激しく樹が傷んでしまうので、玄関や廊下など、暖房をしていない場所に置くようにします。

寒さに弱い樹種を育てる場合や、大雪や氷点下を記録するような地域では、盆栽を入れておく保護室=ムロを設けてくといいでしょう。

ムロに入れる際は、暖かい気候で育つ樹種以外は、樹に季節感をわからせるため、2、3度霜に当ててから移します。特別に寒い日、地域以外は外気温と同じくらいにしておくために、日中はムロを開け放っておきます。

芽が膨らみはじめたら取り出して、徐々に外気に慣らすため、軒下などにしばらく置いておきます。芽が伸びてから取り出すと、寒さへの抵抗力がないので、芽を傷めたり、芽止まりを起こしたりします。

冬の寒さの厳しい何日かだけ盆栽を保護したい場合は、市販の発泡スチロールの箱に盆栽を入れておきます。発泡スチロールは保温性にすぐれているため、外気が氷点下に下がったとしても、中に入れている植物はダメージを受けにくくなっています。

温室やサンルームがあるのであれば、日当たりを好むものを窓辺に、乾燥に弱いものは、日の当たりにくい奥の方に置いてやるようにします。ホームセンターや園芸店で入手できる、ビニール温室が3,000円程度から販売されています。

また、カラーボックスや靴箱などに上からビニールを掛けて、簡易的なビニールハウスを作ることもできます。

冬に弱い盆栽樹種について

一般的に針葉樹が一番寒さに強く、続いて落葉樹、常緑樹の順となります。柑橘類など温暖性の樹種は寒さに弱いので、保護対策が必要となります。

冬に弱い盆栽樹種一覧 ↓付記、チェックなどお願いします。

葉物類

イチョウ、ガジュマル、クスノキ

花物類 

サザンカ、サルスベリ、ブーゲンビリア

実物類 

アケビ、ウメモドキ、キンカン、キンズ、ザクロ、ミカン

盆栽を冬に育てる注意点

北風、乾燥、凍結、積雪

⇒縁の下、軒下、棚下などに移動

⇒室内の暖房指定ない場所に移動

⇒ムロ(保護室)を利用する

★ムロ

盆栽を冬の寒気、寒風、乾燥、積雪、凍結などから保護する設備

◆ムロの理想的な温度・湿度

温度 3~7℃  湿度 40~60%

⇒ムロを開閉して、温度・湿度調整が必要

ムロに入れる前に

寒さに当てる

・寒さに当てて、樹に冬が来たことを確認させ、2、3回霜が降りたのであれば、ムロに入れる。

早くにムロに入れてしまうと、樹の調子が狂って、自然への適応能力が低下することもあるので注意が必要です。

掃除をする

ムロの中は病害虫の被害が起こりやすいので、苔をはがしたり、小さめのブラシ(歯ブラシで可)で、幹や枝、根元の立ち上がり部分の汚れを、取り除いたりしておきましょう。消毒をせずに、しっかり掃除をしておくだけの方もいらっしゃいます。

消毒をする

樹の休眠期の冬には、強めの薬剤をかけても薬害が出ないので、この時期に消毒を行うのが一般的です。石灰硫黄合剤は浸透性があって被膜を作ってくれるので、害虫と樹皮の間に産み付けられた害虫の卵の駆除に効果があります。

石灰硫黄合剤をだいたい30倍~80倍くらいに薄めた石灰硫黄合剤を霧吹き等に入れて、散布するか、10倍~20倍に薄めた硫黄合剤を容器に入れて、逆さまにした盆栽の鉢上部分をつけます。

散布後は風通しのよい所に置いて、しっかり乾かしましょう。容器に浸した場合は薬剤が垂れて鉢に付かないように注意して下さい。散布後1週間~10日位、外においた後、ムロに取り込みます。

石灰硫黄合剤は強アルカリ性のため取扱に注意が必要です。以下注意点となります。
↓↓↓

(注意点)

使用時はマスクやゴーグル、ゴム手袋等を装着しましょう。

皮膚に付着、眼に入った場合は直ちに水でよく洗い落とす。眼に入った場合は直ちに眼科を受診して下さい。

強烈な臭いがするため、散布時間や、散布場所を考慮して下さい。

薬害を引き起こさないためにも、対象植物を確認し、希釈倍率きちんと守りましょう。

石灰硫黄合剤を使用するのには抵抗がある、という方は、専門店や園芸店などでお店の人に聞いた上で、農薬スプレーをすることをおすすめします。科学的なものを極力避けたいという方は、木酢液やニームオイルを希釈したものでも代用できます。希釈する際は、樹種、状態によっても希釈倍率が変わってきたりもしますので、販売店、説明書でよく確認してから使用して下さい。
                  
霜が降りてから、消毒をする

しばらく寒さに当てて、樹が冬を確認したらムロ入れをする

■ムロの種類・やり方

市販のビニール温室を利用する

発泡スチロールでの保護

蓋付きの発泡スチロールをホームセンターなどで入手します。魚屋さんやスーパーなどでもらえるところもあります。クーラーボックスとして使用していたものを流用するなら、洗っておいて下さい。

発泡スチロールを利用する場合は、日中は蓋を開けて日光に当てます。霜や寒気から守るため、夜は蓋を閉めておきます。

簡易的なビニールハウスの作り方 

カラーボックス、木箱等を使って市販の、本棚やカラーボックスなどに鉢を入れて、少し厚手のビニールをかけます。日中は前面のビニールを外して日当たりと通風を確保し、夜はビニールを下ろして、レンガなどで重石をします。

1.市販のカラーボックスを用意する


    

収納ケース、コンテナなどを利用

市販の収納、衣装ケース、農業用のコンテナなどに盆栽を入れて、日中は蓋を開け、寒くなってきたなと思ったら蓋を閉めておきます。引き出し型ものは、引き出しを開けたり、蓋のないものは寒気の強い日は、上からビニールで覆ったりするなどして盆栽を冷気から守ってあげて下さい。

そのまま水をあげるのであれば、発泡スチロールと同様に底面に穴を開けておくか、水切り用の台やかごを敷いて利用すると便利です。

ムロ出し

冬期保護、特に室内で保護されていた盆栽は3月中旬頃から、日中外に出して、夜取りこんでというのを繰り返し、蓋付きのものに入れていた盆栽も、外に出したり、保護している覆いを開けっ放しにしたりして、風を通して寒さに徐々に馴らしていきます。

暖かい地域によっては2月下旬ごろから馴らしていくことも可能ですが、寒い地域では積雪の恐れもありますので、3月下旬頃からになるかもしれません。

いきなり急激な温度変化が起こると、樹に負担がかかり、新芽が霜で傷んだり、落ちたりしてしまいますので、天候や樹の様子を見ながら外気に当てる時間を調整して下さい。

4月初旬~中旬頃には、ムロから出して完全に屋外での管理に戻すようにします。山野の樹木が一斉に芽吹くこの季節、盆栽の樹の芽もむくむくと育っていく時期になりますので、屋外の通常管理に切り替えましょう。

ムロ出しのタイミングは、早すぎると寒さで樹が傷んでしまいますし、遅すぎると蒸れで気を傷めてしまいますので注意が必要です。

寒さが少しやわらいだ春の訪れの前、植物の芽がふくらむ直前に、ムロから盆栽を取り出しましょう。

!!!長く入れすぎると、植物にとって過保護な状態が続き、生育にも悪影響が出てしまいますので注意して下さい!!!

こんなときは?

台風や嵐が来ているとき

室内に取り込むなら、窓の近く、縁側など日当たりのいい場所に置きましょう。屋外に置いたままにするのであれば、鉢が倒れたり、落下したりしないように、針金やひもで固定する、風よけを作る、箱の中に入れておく(※蓋をする場合は重石をしていくこと)、などの対策をしておきましょう。

雪が降っているとき

冬に屋外管理、ムロの蓋を開け外気にさらしている場合、雪が少々盆栽に降り積もるくらいは許容の範囲ですが、あまりの積雪は樹が潰れてしまいますので、置き場所を選んで下さい。屋外で雪が降り積もっていても、日当たりがよく、風のない日には樹を日光に当てて下さい。乾燥や湿気対策に、保護室内に雪を入れておくという管理の仕方もあるようです。

まとめ

盆栽は購入した後の管理が、至極大事です。管理の仕方について諸々述べましたが、日本全国津々浦々、春の訪れ、積雪の有無、日本海側特有の気候、太平洋側特有の気候など東西南北で、暑さ対策・遮光、寒気・冷気対策などが違ってきたりもします。盆栽を購入したお店、専門店などに都度聞いてみると、新しい発見もあり、盆栽の管理も一層楽しいものになるのはないでしょうか。

月ごとの管理の詳細は盆栽基本の育て方 毎月の作業にてご確認下さい。

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この記事を書いた人

小林真名実

小林真名実
福井県出身。関西学院大学卒。雑誌・書籍・ウェブ・携帯サイトの編集に従事。その後、日本の映画・放送・アニメーションなどのコンテンツ産業を国際競争力ある産業とするNPO法人にて広報、戦略室業務などを担当。その後、出産を経て夫の転勤に伴い香川県に移住したことをきっかけに盆栽を知る。日本の伝統文化である盆栽の奥深さを世の中に伝えたく盆栽総合情報サイトの立ち上げに参画。編集長に就任する。
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