予約の取れない盆栽講師 清寿園

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予約の取れない盆栽講師 清寿園

針金の掛け方で欠点にも見える枝をも活かし、魅せる。 芸術性の高い職人技が生まれた背景とは?

盆栽の成形に最も重要な工程となる針金掛け。その手法は人それぞれですが、作り手と木の個性が相まって作り込まれていく盆栽は、作り手によって全く違ったものへと姿を変えていきます。今回は、そんな針金掛けの技を極めた盆栽職人、平松清さんにお話を伺いました。

この道52年の盆栽作家。受賞も多数

祖父から3代続く「平松春松園」で兄とともに7年働いた後に分家し、「清寿園(せいじゅえん)」を立ち上げて45年になる平松清さん。盆栽の成形に最も重要な針金掛けの技を極める、芸術性の高い盆栽作家として知られます。


盆栽は、根張り、幹の流れ、枝付き、葉状、古木感などを基準に評価されますが、平松さんが形作る時に心がけるのは、「樹木が持って生まれた個性を、いかに引き出してあげるか」ということ。例えば不要な枝など、欠点に見えるものに手を加えることで、思わぬ趣おもむきが生まれることもあるそうです。

「自然に育った山の木を盆栽にしたてるのが、一番やりがいがあります。自然と人との調和によって美しい盆栽が生まれるんです」と平松さん。
子どもの頃から盆栽を見て育ち、それを仕事として50余年。小さな苗から松を育てた時期もありましたが、今はほぼ仕入れた松柏類の改作を専門に行っています。また、愛好家向けの講習会で講師を務めることもあります。
学んでも学んでも終わりがない代わりに、いつまでたっても興味深く楽しいと、盆栽と過ごした半世紀を振り返ります。

植物として健やかだからこそ、造形が映える

盆栽を改作するには、植物としての健やかさや活気が必要です。そのために1年間のおもな手入れの流れがあります。
松の盆栽では、新芽が出た6月中旬には「芽切り」をし、7月中旬には芽切り後にたくさん出た芽を2芽だけ厳選する「芽かき」をします。9〜10月は芽が揃い、松が一番きれいに見える時期です。11月になると前年の葉を取る「古葉取り」。そして3月には「植え替え」や「葉すかし」を行います。「葉すかし」は春に出た葉を5枚ほど残し、その他を抜きます。そうすることで次の春の芽が均一に出てくるようになるのです。

季節ごとの作業以外にも、日々のきめ細やかな手入れも多いそう。手間のかかるこれらの作業に手を抜くと、盆栽に元気がなくなり、冬場に針金掛けを行うことができません。逆に言うと、これらの作業を丁寧にするからこそ、「ジン」や「シャリ」を施し大胆な改作を行う平松さんの作品が、植物としても生き生きと輝いてくるのです。


多様な考え方の職人がいるから文化が生まれる

平松さんが手掛ける盆栽は芸術性の高いものが多いのですが、「黒松も雑木も、盆栽は盆栽。いろいろな人がいろいろな考え方で向き合うからこそ、産地が栄え文化ができるんです」と、高松が愛好家にも初心者にも魅力ある盆栽の里であることを望んでいます。
今後は、作業場の一部を花ものや実ものの小さなショップにする構想もあります。

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この記事を書いた人

野口育実

野口育実
盆栽妙スタッフ。モノを育てる・増やすのが好きで、メダカや菌類を増やすのが趣味。盆栽初心者で入社し、今では盆栽と苔の世界にハマる。現在は挿し木と苔テラリウムについて日々勉強中の二児の母。
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