鉢作り体験記

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鉢作り体験記

オーブン陶芸で陶芸初心者が盆栽鉢作りに挑む!! 果たして盆栽鉢は、 できるのか?  盆栽妙陶芸部が思いの丈を盆栽鉢にぶつけました!

「オーブン陶土」を使った手軽にできる、盆栽鉢作りを、『盆栽の学校』陶芸部が体験しました。

盆栽において鉢はなくてはならないものです。

樹と調和し、一体となって自然の趣を表す上で、樹と鉢の組み合わせ=「鉢合わせ」でが盆栽全体の印象=「鉢写り」がガラッと変わってしまいます。
※鉢合わせについては盆栽鉢のページをご覧下さい。

盆栽愛好家としては、色、形、鉢の大きさなどあれこれ思い巡らせながらの鉢選びも大いに楽しいものですが、さらに一歩進んで鉢作りの楽しさを、盆栽の醍醐味として加えてみてはいかがでしょうか。

ただし、本格的陶芸というと、腰も気も引けてしまう方も多々いらっしゃるかと思います。道具、スペース、なんと言っても焼成用の電気釜は一般家庭には敷居が高いですもの。というわけで、ここでは「オーブン陶土」を使った手軽にできる、鉢作りを、『盆栽の学校』にて体験レポートさせて頂きます。

「オーブン陶土」とは、家庭用オーブンを使用して陶器を作ることができる「低温度硬化型粘土」のことだそう。メーカーや種類は幾つかあり、強度や焼成(しょうせい)温度などが若干違うようですが、オーブンさえあれば作ることができるという点は共通しています。

『盆栽の学校 陶芸部盆栽鉢研究班』にてありとあらゆる種類っぽい盆栽鉢について調べていくうちに、自分で手軽に盆栽鉢を作れないものか、とある陶土に辿り着いたのが、パッケージのコアラがかわいい「ヤコのオーブン陶土」なのです。

特徴としては、

実用強度がある
練らずに使える・焼き上げ後の成形が可能
本陶芸と同じ手法が使える
コート剤「Yu~」を塗ることにより、食器として使用できる
アクリル絵の具等を使用して、様々な質感を表現できる


などです。

まとめますと 自宅で形も絵柄も自由に簡単に陶芸できるよ ということです。

陶芸初心者ばかりですが、気合十分で盆栽鉢作りに挑戦してみる運びとなりました。

常日頃見慣れている盆栽鉢、日夜研究を重ねている盆栽鉢、愛して止まない盆栽鉢! ですからイメージは何となくあり、何とかなるだろう、と見切り発車です!


【使用するもの】
・ヤコのオーブン陶土(各400g)
 工作用
 MILK
・へら 数本
・プラスチック棒
・粘土板
・水・霧吹き
・ヤコのオーブン陶土専用 耐水・耐油コート剤 Yu~ 100cc
・アクリル絵の具
・筆
※オーブン陶土は数種類あるようです。お好みで、単色でも違う色と混ぜて使用してもいいのでは。工作用:土色、黄土系茶色, MILK:乳白色, 紅陶:赤っぽい色, 黒木節:黒に近い茶色, エコ:土色、黄土系茶色地球環境に優しい




↑ヤコオーブン陶土HPより↑

ヤコのオーブン陶土のHPに、作り方があるということで、さっそくチェック!

思ったよりざっくりとした説明だったので、ほぼ勘を頼りに制作に入ります。


MILK担当と工作用担当に分かれて、作ります。

MILK担当は黄色い粘土板、工作用担当は青い粘土板。

開封してすぐに練らずに作れるということでしたが、現時点ての外気温6℃、暖房入れたての部屋で室温17℃ということで少々固くなっている感じもしたので、取り敢えず練ってみます。

通常の陶芸用の土と違って、さほど練る必要もなく、やわらかくなりました。
(※基本的には練る必要はないそうです)

粘土をお団子状にし、粘土棒で丸く広げたものを手に取って、鉢らしく深さを出して外側に広げて形作っていきます。


アッという言う間に1つ完成し、残った半分の粘土で、もう1つ作ります。

伸ばした粘土を、盆栽鉢の底にするため、丸く切り抜きます。


陶土を紐状にして土紐を作って、重ねながら高くしていきます。

形を整え、へらで線を描いて完成! 思いのままを形にしたということですが、スタッフからは、はすやぼたんを彷彿とさせるという意見も。

一方、工作用担当ですが……



MILK担当と違い、ちょっとというか、だいぶんモタモタと……ピザとかパンなら時にはこねてるんですけど、ね……。


まず土台を作ります。


陶土で紐を作って、土紐を重ねて、へらでこすりながらまた重ねてを繰り返し、高さを出していきます。


土紐で1つできたので、次は、たたら作り(もどき)に挑戦してみます。
※たたら作りとは……粘土を均一に板状にしたのものを組み合わせて成形する技法。

長方形の鉢を作るため、板を5枚用意します。本当は、形とか薄さとかそろっているべきなのですが、取り敢えず張り合わせて……

粘土棒を使って穴を開けて完成。


イメージ通りにはまったくいきませんでしたが、何とか完成。若干というか大分ぐしゃっと感が出ています。

へらとか爪楊枝などで模様をつけてもGOODのようです。

成形したオーブン陶土を、5日間~7日間ほど自然乾燥させます。小さいもの、薄いものであれば2、3日間で乾燥も可能なようです。

乾いてくると、表面が白っぽくなってきます。全体が白くなったら乾燥した合図。持ってみると、乾かす前より、随分軽くなりました。ここで、乾燥が不完全ですと、焼いたときに割れてしまう場合がありますので、しっかり乾かします

乾燥中にひびが入った場合は、ひびの入った部分を、筆に水を浸けてぬらし、オーブン陶土を水で溶かしてペースト状にしたものを塗り込みます。

※乾燥中に工作担当の盆栽鉢の足が取れてしまったので、乾いて固くなった粘土を水につけて、やり直しました。水に浸けすぎると、粘土が固まらなくなってしまったり、水に溶けてしまったりするので要注意です。


乾燥したらオーブンで焼きます。オーブンの鉄板には、アルミホイルかオーブンシートを敷くようにします。


160℃から180℃で30分~60分程度とのこと。

工作担当は180℃で30分程度焼きました。使用機種はパナソニック「ビストロ」です。
焼き時間は作品の大きさ、厚み、気温などによって変わってくるようです。30分程度焼いて、様子を見ながら少しずつ時間を延ばして調整してもいいかもしれません。

焼いている途中独特な臭いが漂いますが、問題はありません。


焼きあがったら、オーブンの扉を開けて、少し冷まします。

焼いた後は乾燥時より10%程度縮んでいるそうです。


焼くと、味わいが出て、元の粘土に近い色になったかもしれません。

このまま、専用の耐水、耐油コート剤「Yu~」を塗って、再焼成してもいいのですが、着色して、焼いてみます。

冷めたら着色していいようですが、ここまでの作業が夜だったため、1日ほど置いて、絵付け、着色していきます。


着色にはアクリル絵の具を使用します。

床やテーブルなどを汚したくない方は、新聞紙、ビニールシートなどを敷くことを推奨します。

自分だけの盆栽鉢ですから何を描こうが自由! キャンバスは盆栽鉢!

現代アート、アクション・ペインティング、加賀百万石、魯山人、唐三彩などなど思いつくイメージをアクリル絵の具に乗せて、盆栽鉢にぶつけます。

絵付け・着色後は再び乾燥させます。工作担当は1日ほど置きました。



絵の具が完全に乾くのを待って、耐水・耐油・つや出し効果のあるコート剤「Yu~」を塗ります。

コート剤「Yu~」は食器として使ったり、防水や防湿したりしたい場合は使用します。また、強度を出すためにつや出しとして使用します。

塗ったらまたまた乾燥させます。

乾いたら、再度オーブンに入れます。100℃で20分焼成します。

盆栽鉢作りが、とても楽しくなった工作担当ー「オーブン陶土」をお取り寄せし、もう1つ作ってしまいました。



冷ます時間も入れて待つこと1時間、世界に1つの盆栽鉢が3個できました。


余った粘土で作った箸置きと髪飾り、春らしく桜をモチーフに。

そして、いよいよクライマックス!!!


実際に、盆栽として仕立てます。

盆栽は樹と盆栽鉢の両方が揃って「盆栽」としての意義が成り立つものです。夢にまで見た、盆樹と自作の盆栽鉢との「鉢合わせ」!

棚場に鉢を持ち込み、盆栽妙代表セレクトで1点ずつ樹を鉢を合わせていきます。自分で作ったオリジナルの鉢を使って、樹との「鉢合わせ」が楽しいことといったらこの上ありません。



樹を植え込んで、苔や化粧砂を施し……


盆栽ができた瞬間、表現し難い喜びがこみ上げます。

焼成前、絵付け前もあまりにのぐしゃっと感、ぐちゃっと感が出ていたので、盆栽になっ途端に称賛の嵐(ちょっと大げさ)。やっぱり、鉢と樹が揃ってこそ、これぞ盆栽!

群青で刷毛目を付けた雅な鉢には華やかな花物類。

控えめなアクション・ペインティングがスチール感を醸し出す鉢には、硬質な五葉松。

クリーム地に金彩を施したような鉢には山モミジに苔を敷き詰め、侘び寂びの美を体現。


↑盆栽妙陶芸部、ヒーリング担当スタッフの自宅制作の気鋭の作品もお出ましです、はにわくん付きで。

苔やシダの緑が、着色していない亜麻色というか象牙色の陶土に生えます。

※オーブン陶土MILK担当の鉢も近日焼成、ペイント予定。


3月下旬になり、桜も満開を迎え……(はにわくん付きで)咲き誇っています。


4月になり、桜が散って、紅葉の新緑がではじめました。新緑なのに葉のふちが赤く、紅葉の片鱗があり、渋すぎる子どもたちです。ここからまた、葉は緑色になり、秋になり赤くなっていくはず、松も5月の剪定に向け茂っていくはずです。

自作の鉢の盆栽は感慨もひとしおーー樹々の表情の変化を、自作の盆栽鉢と共に楽しみにしたいと思います。

自由な発想、自由な大きさで盆栽鉢を自作し、好きな樹を植え込んで、盆栽に仕立てる……まさに世界に1つだけの盆栽を、オーブン陶土を利用して、気軽に作ってみてはいかがでしょうか。 

途中でぐしゃっとしましたが、感無量、大成功というわけで、そして陶芸部不定期活動は続きます……。

おうち時間を楽しく過ごすために、もってこいの「盆栽鉢作り」。興味のある方も無い方も、この機会に陶芸の世界、盆栽鉢の世界に触れてみるのもおすすめですよーー。

まとめーオーブン陶土の盆栽鉢作りを体験してみて

1.作りたいイメージの鉢を本やネットでリサーチしておく。
2.合わせる樹をイメージしておく。
3.陶芸の本やネットで、どんな作り方があるのか調べておく。
4.成形したものの乾燥時間を十分にとる。
5.乾燥中にヒビが入った場合は、乾燥箇所に粘土を水で溶いたものを塗り込む。
6.乾燥中に部分的にもげてしまったら、水にしばらく付けて成形しなおす。(もちろん新しい陶土があればそちらを使用して下さい)
→4~6:焼成してヒビが入ったり、壊れたりするのは、空気が入ったり、乾燥が不足している証です。空気が入らないよう、また、乾燥を十分に!
7.陶芸部でもちょっと論じられましたが、オーブントースターでは不可です、必ずオーブンかオーブン機能付き電子レンジを使用しましょう。
※オーブン陶土400gで、画像の盆栽鉢(直径10cm程度、三辺合計20cm程度)2個と箸置きが作れる程度でした。ヤコの「オーブン陶土」 http://www.yako.co.jp/

一番大切なのは……
なんといっても自由な発想で取り組みましょう! 楽しんでやるのが一番ですからね☆

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この記事を書いた人

小林真名実

小林真名実
福井県出身。関西学院大学卒。雑誌・書籍・ウェブ・携帯サイトの編集に従事。その後、日本の映画・放送・アニメーションなどのコンテンツ産業を国際競争力ある産業とするNPO法人にて広報、戦略室業務などを担当。その後、出産を経て夫の転勤に伴い香川県に移住したことをきっかけに盆栽を知る。日本の伝統文化である盆栽の奥深さを世の中に伝えたく盆栽総合情報サイトの立ち上げに参画。編集長に就任する。
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